ちはやふる 第35巻(第179-183首)考察

漫画

  • 表紙絵:太一、金木犀
  • 表紙袖:月見れば ちぢに物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど(第182首)#23
  • 巻末漫画:続・文化祭で北央勢と対戦する原ちゃんと一年生部員

以下、伏線と名言の個人的メモ。

第179首

楽しいな 今日は ここにいるみんなを 翻弄しにきたから

ついに、名人位クイーン位予選の開幕。受験勉強でスルーしたのか、吉野会大会などの描写はない。太一という名前についての前振りは第26巻第136首と第138首以来三度目。現実世界の有名人でも馴染みのあるこの名前、Wikipedia - 太一の項目が興味深い。名前と言えば、太一妹について、第3巻第13首にある梨華が由香となっている。作者ミスか、改名でもしたのか。

田丸や西田が各かるた会のユニフォーム姿であることに、がっかりする千早。とは言え、白波会所属で出場していながら瑞沢Tシャツを着用している方がちぐはぐに思える。高校生大会で見慣れていたせいか、所属以外のユニフォームが実は場違いであることに気付かなかったよ。しかし、原田先生が作務衣愛用な故、揃いのTシャツを持たない白波勢。過去の一般大会を確認してみると、千早と西田一年時の予選、太一二年時予選、太一の高松宮杯は、瑞沢Tシャツ。他は一年生での埼玉大会、二年生で吉野会大会と新春大会しかないが、いずれも袴姿。今回の太一はパーカーを着込んでいるが、首元から覗かせているTシャツは千早と同じ色。ここぞという場面でお披露目となるのだろう。

試合で読まれたのは「あきかぜに」「このたびは」。いやしかし、太一がひたすら不気味だ。田丸兄とのシンクロぶり、ぞくっとするね。顔つきがやたら美形というか女性っぽいのも、違った意味でぞくぞくするねw

第180首

私はね だれも信じないだろうけど ときどき 読まれる札が浮いて見える

予選一試合目から厳しい戦いとなってしまった千早。読まれた札は「うかりける」「なにわえの」「わたのはら・や」「あきかぜに」「おとにきく」「せをはやみ」「あきのたの」「さびしさに」「たごのうらに」「ふくからに」。

呼吸のことは以前から何度も描写されているが、離れていても太一とシンクロしまくり。「読まれる札が浮いて見える」は、第24巻第128首で紹介された原田先生の教えに基づくもの。同時に、そして過去に何度も、右下段への攻めについての言及もある。千早の言うz軸で思い出されるのは、第23巻第123首で詩暢祖母が畳に描いた斜線。

第181首

「須藤さん またしましょうよ 賭け こういうのどうですか? ”先に負けたほうが 競技かるたを辞める”」

一回戦が終わり、二回戦が始まる前まで。全国大会後の第32巻第165首で「同じ決意を返すから」と独白していたホワイト太一とはすっかり別人で、死神のような言われようだが、第98首の武村も名人戦後は半年取れなかったと言っており、田丸兄もそうなるのか……合掌。須藤は過去の所業で自分の首を絞めた。

新はせっかく府中まで来たのに、返事保留中の千早はともかく、太一にはお友達としてメールくらいしようよ。会う会わないは別として。相変わらず行動が不自然。周防との繋がりを知ったのが影響しているのか、やはり恋愛面で警戒対象なのか。第12巻第68首で新自身が「試合のときしか二人に会えん運命なんかな」と言った通りにしてしまっている。また、生徒気分では駄目という考え方について、前年の原田対新の挑戦者戦、第22巻第116首で千早は新に「原田先生はどこまでいっても『先生』なんだよ 新のままじゃ勝てない」と忠告している。その時の新は祖父に成り代わって乗り切った(とはいえ負けた)が、忘れられてしまった模様?

第182首

君たちは 自分たちが主役の物語を生きていると思ってるだろう? ちがうよ 輝いてる君たちでさえも だれかの物語の一部分(パーツ)だ 一部分(いちぶぶん)だ どんなにかけがえがなくても

二回戦、それぞれの戦い。主役という言葉は第179首で田丸兄も使っている。彼は負けた。自分が自分が、の人は負ける法則なのだろうか。千早は他人の技を知ろうと未だ貪欲さを見せている。太一は「翻弄しに来た」ので脇役側。桜沢、原田、ユーミンなど、自分が他人に手本を示したいという考えは危ういのかも。新は村尾の敵討ちのために自分が、と考えてしまうと拙いね。

ヒョロの「真島は綾瀬がそばにいないほうが~」は第17巻第93首。千早が止めに入った時に太一は千早を見ているが、その後は何処に視線を向けているのか、何を思ったのかは読み取れない。そして、第14巻第76首の前年全国大会決勝戦にて、一度対戦しただけの年上をエロム呼びw

試合で読まれていたのは「わびぬれば」「つきみれば」「あしびきの」「つくばねの」「はるのよの」「みかきもり」「もろともに」「あさぼらけ・う」「きみがため・お」「すみのえの」「あまのはら」。

第183首

勝つ できるだけ 真剣勝負をしてる あいつのそばにいる

二回戦、三回戦が終わり、準決勝へ。肉まんくんの「勝つ~あいつのそばにいる」は、第29巻第149首で千早が考えていた「そばで戦い続ける だってきっと太一ならそうする」に通ずるものがある。なるほど、「勝ちに来たんじゃない」と言う太一の答えが曖昧になっているが、揃いの瑞沢Tシャツがそれなのかもしれない。

第29巻第149首の大江母に続いて太一画像コレクターに出会った太一母だが、付き合っていた彼女のことやかるた部員以外の友達の存在にも、興味を向けたことがなさそう。近江神宮に来るなど太一を見ているという描写を経て、かるたを許す方向なのかと思いきや、連れ戻し宣言なので、結局どうしたいのかが分からない。そもそも、医者である太一父もどう考えているのか、登場を待ちたい。

太一の方は子供時分に目を向けてもいなかった母の所作をこの巻冒頭の第179首では気付いており、歩み寄りがみられる。第31巻第161首で周防に「持ってるものを無視しすぎだ」と注意された反省もありそうだ。

描写があった札は、千早と桜沢戦で「みちのくの」、太一と瀬田戦で「おもいわび」「しらつゆに」くらい。

つきみれば

表紙や作中でも描写されている金木犀の花言葉は、小さい花なのに香りが素晴らしいことから「謙虚」、散り際が潔いことから「気高い人」が代表的らしい。他には「真実」「陶酔」「初恋」とも紹介されている。千早の援護射撃的なつもりで来ている面もあるようだし、「気高い人」が一番しっくり来るかな。帯は「その香りに惑い、溺れる。」

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