イギリス ラムズゲート ホストマザー

旅程の前半は、一般家庭に住まわせて貰いつつ語学学校に通うというプログラム。ロンドン・ヒースロー空港から三時間余りバスに揺られ、すっかり暗くなったラムズゲートに到着。私達一行は語学学校前で解散、手配されていたタクシーに分乗し、各ホストファミリーへ向かった。

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タクシー運転手氏が重いスーツケースを運ぶついでにチャイムを押すと、女性が出て来た。私が口を開く前に「ようこそ! 待ってたのよ」的な爆裂トーク。何とか自分の名前だけは名乗り、その後は家の中に押し込められる形となった。あまりにも慌ただしかったので、運転手氏に礼を言ったのか、彼女とどんな会話をしたのかは覚えていない。

事前に知らされていたのは「Ms.~」のみだが、旦那様と娘二人がいる四人家族だった。日本からの手土産は夫人向けのみで、和風のハンドバッグと風呂敷。あまりにも高価なものは困ると言ったのに母に無理矢理持たされたため、更に箱菓子もとなれば渡し過ぎになってしまう、と止めたのは失敗だった。

三階建ての二階の一室が、私に与えられた部屋。ガラスケースに入った日本人形が飾られていた。「前に来た学生からの贈り物なの。日本人だったかしら、中国人だったかしら」。何人もの留学生を受け入れているので、忘れてしまったらしい。母が選んだ土産もそうなるのかな、決して安い品ではないのに、と微妙な気持ちになった。

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そして、翌朝。ホストマザー曰く、「あなたの名前、何だっけ」。えええー!? 今更それを聞くか!? 最初に名乗ったよね……私の声など掻き消されるくらい賑やかだったけど。でも、日本から予め手紙も出してあるし、語学学校側からも情報は当然来ている筈だし。驚きを隠さない私に、「ああ、そうじゃなく……ほら、発音をどうすればいいのかしら、ってね」。ちょっと言い訳臭かった。その綴りから読み方に悩んで一言も発せなくなるような名前ではない、と思うけれど。

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滞在中は平凡に過ごし、何度も礼を言って別れ、ロンドンに移動してから葉書を、日本に帰国後にも手紙を送った。丁寧かつ長めに感謝の気持ちを綴ったつもりだが、返信は一通も無かった。

ホストマザーは事務系の短時間パートをしていた。学生を受け入れると手当が出るし、そういったご夫人達のサイドビジネスには打ってつけらしい。確かに、私は短期間な上、勿論トラブルも無かった反面、特別に親密にもなれなかったが、残念ながらその程度ってことだ。

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