ちはやふる 第37巻(第189-193首)考察

  • 表紙絵:新、牡丹
  • 表紙袖:春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山(第190首)#2
  • 巻末漫画:東日本予選から帰宅中の富士崎勢

以下、伏線と名言の個人的メモ。

第189首

消えて いかないで

太一と須藤の試合終了。太一の狙い通り、須藤がお手付きを二回しての逆転勝利。須藤は太一の目力と心理戦にやられた。終了後の両者の表情は、見事全く描かれていない。千早は自身が試合中でもあるが、須藤に恩があるしで、「よかったよかった」の独白で描かれているのは背中だけ。思えば試合開始直前の第36巻第184首も独白で「太一がんばれ」のみだった。

千早の「あと5枚…?」は、五枚とはいえ空札もある、と残り札を把握している状態のようだ。理音は「あと一枚」が続き、千早とは逆で、視野が狭まって来ている。前巻からの「札が浮き上がる」話で太一が驚いていたのは、高校一年時の第2巻第11首では「正確に覚えられてない」段階だった千早が「完璧に暗記」出来ている成長振り、と今更ながら気付かされる。

原田先生と同じく「札が浮いて見える」という千早と、「消えて見える」という太一。千早は先生とクイーンを争うわけではないが、太一は先生とは敵になるのだから、同じ白波会だけれど違った見え方になって正解なのだと思う。第35巻第181首でも出て来た「生徒気分」と、回想場面にて須藤が「丸かぶりの技だけで戦うのか?」と苦言を呈していたように、先生と同じでは先生を超えられないから。その原田先生は太一について、前話に続き「恐ろしい」と評している。

髪キャッチ後に千早が取ったのは「おくやまに」。その後読まれたのは「こいすちょう」「ふくからに」「なにわがた」「たごのうらに」「ちはやぶる」「おおえやま」「つくばねの」「たきのおとは」。畳に残っている札は、理音側に「はなのいろは」、千早は「たれをかも」。

第190首

さみしくなくなって やっと 相手と戦える

千早と理音の試合終了。意味ありげな畳に残しつつ、最後は空札の「はるすぎて」で理音がお手付き。ばら撒かれた餌は疑似餌だったのか、ってな程に何も起こらずじまいだ。各キャラの心情を知りたかったのに、理音は泣いている遠景、須藤も背中のみ、太一の表情も終始ほぼ描かれていないし、田丸の対戦相手陣営は悔し紛れでも睨んで来るのはどうかと思うし、桜沢先生と対面している田丸を引き剥がす一年生達は失礼極まりなく、太一は一歩間違えばマナー違反な香害テロ、第188首で「新のところへは自分で行くよ」と言っていたのが「譲るんだ」になるわ、千早の「わからないけどわかるよ」は相変わらず曖昧でさっぱり訳分からんwww

太一母の香水、ディオールのはメンズ向きらしいので、グッチのフローラ・バイ・グッチあたりでいかがでしょう。

第191首

「絶体絶命を愛せよ まつげくん これから先ずっとだ」

東日本予選決勝戦。太一と原田の師弟対決がみっちり描写されると思っていたら、実力や戦術よりも身体機能の問題だったので、この回だけであっさり終了。連戦ではなく一試合きりならば違った結果が出た可能性もありそう。

千早と田丸の試合描写に至っては皆無。男子と同時に終わっているようなので、田丸相手にしては苦戦と言える。束勝ちを期待していたのに。ただ、千早もまた高校予選の第29巻第149首のように、仲間にペースを合わせられなくもない? 一緒に戦った後の同じ瑞沢Tシャツ判明なら感動もひとしおだね。

回想の中で、太一父初登場。十歳くらい年上でダンディーな外見を勝手に予想していたら、恐らく同い年で、とっつぁん坊や風w しかも医者家系は母側で、父は婿養子という新情報。母は自身が家業を継いでいない後ろめたさから、太一を厳しく教育しているのかな。そのくせ、妹は私立小っぽいのに、期待を掛けた太一は公立小なのも疑問だが。あの母にはまだ謎がある。

「鶏口牛後」の意味は、「大きな集団や組織の末端にいるより、小さくてもよいから長となって重んじられるほうがよいということ」。中学生編終盤で触れられるが、これは太一が何故瑞沢に進学したのかにも繋がっている。

原田と栗山先生も幼馴染。周りの子が方言を話しており、栗山の地元ならば福井となるが、原田は台詞の少なさと目上の人に標準語で話しているせいで福井人っぽさが薄い。原田が転勤族の子供か、他地域から大人になって散り散りになったのか。もし原田が福井出身ならば、新に「同郷だね」の一言くらいはあっただろうし。

試合で読まれたのは「あけぬれば」「あいみての」「いにしえの」「ふくからに」。

第192首

行くんだ その先へ

太一、袴を買いに行くの巻。大江母は流石プロフェッショナルだし、はっちゃけつつもお母さん然としている。第19巻第103首の吉野会大会決勝戦前に着物を直して貰ったのを、太一が回想しているのが嬉しいね。

序盤と終盤で二度も「かるたがあるからまた会える」が登場するが、キーワードは「友達」か。太一はかつてなく赤面するわ、名人に勝つ宣言をしたりと、肉机達に以前より一層気を許している。第15巻第82首の机プロファイリングではプライドが高いとされていたのが、高校選手権決勝での「三勝するぞ」宣言を経て、振られ報告あたりから距離感が大きく変化したような。

一方の新は友達として真っ先に同性のではなく由宇を挙げる有様で、村尾は兄妹のようなものだと否定。由宇に対する新の認識は、近いうちに問題に上がるだろう。

千早も太一も東西戦は眼中に無いのが面白い。太一の独白「新のところへは自分で行くよ」はどうしたw 勿論、東西戦は通過点でしかないし、新を変に意識しないよう努めているだけかもだが。新は太一と対戦経験があり、白波会を研究したのも仇となって、新型太一に振り回されそう。

九頭竜さんが詠む「おとにきく」と「をぐらやま」とでは、出だし音に違いがあるらしい。宮城の芹沢読手の音声を入手しているのも大きい。彼は第一首冒頭のクイーン戦の読手として描かれているが、作中では他に登場していないので、千早は現時点で聴いたことが無さそうだ。

第193首

東西挑戦者決定戦までの日々。興味深いのは、千早は今年の準クイーンで過去四連覇のクイーン、結川は三連覇中のクイーン、太一も五連覇中の永世名人と練習し続けているとして、新の相手は多分村尾ぐらい。今年の準名人である原田先生の元に来たと第35巻第181首で触れられているものの、滞在数時間程度だろう。村尾は第9巻第48首によれば元準名人(新が中二の時)とあるが、残念ながら他三人より現ランクでは落ちる。地理的事情もあって、新はその点不利だね。

新の大学推薦入試にて、面接官がポカンとした反応にも取れるのが不安要素。かるたをどう社会に還元するのかを考えるよう先生に忠告されていたが、具体的に伝えている場面が無い。結川の素晴らしいプレゼン振りは、対比として描かれたのかも。

新の母は「息子との最後の旅」で上京する筈が発熱し、父が代わりに来た。わざわざ母を遠ざけたからには、男親ならではの役割が発生するのか。駄目親父ではない面も見せておきたいところだ。但し、それは新にとって良い展開にはならない予感。

千早は新の定位置の話を聞いても名前に反応せず、定位置のことに関心が行っている。すっかり戦闘モードなのだろうけれど、条件反射的に頬を染めることが減っている。ただ、真っ赤なスーパーカーの話の背景に久しぶりの紅葉乱舞があり、少し被せるように新の面接場面へと続く。

登場した札は、結川対小石川戦で飛んでいるのが「ももしきや」。千早対猪熊で読まれた「こいすちょう」、千早からの送り札は「みかのはら」で、恋の歌揃え。新の面接時、百人一首を語る場面で描かれているのは「このたびは」「あらしふく」「わがいおは」「やすらわで」など、紅葉や竜田川などが含まれる歌と微妙な内容の歌とが混在。他にぼやけて判別出来ない札が幾つか。

はるすぎて

第34巻の千早、第35巻の太一から一巻置いての、新の襷姿の表紙絵。牡丹の花言葉は「風格」「富貴」「恥じらい」、そして村尾が暗に指摘していた「人見知り」。袖で紹介されている「春すぎて」は理音がお手付きで敗戦した札。マイナス要素が揃っているのが気になる。

尚、表紙に描かれた花について、紙版コミックスにて先生が「椿」とコメントしたものの、正しくは「牡丹」だと発刊翌日に先生自身のTwitterアカウントにて訂正済み。

posted on February 13, 2018  娯楽