ちはやふる 第39巻(第199-203首)考察

  • 表紙絵:新と太一、菖蒲
  • 表紙袖:契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは(第202首)#42
  • 巻末漫画:小石川秀作と結川桃

以下、伏線と名言の個人的メモ。

第199首

わかったんだ 聴こえてるのに いらないと思って 脳が拾いあげない音がある

挑戦者決定戦、二戦目続き。太一は小細工して一戦目を落としたが、正攻法かつ徹底的に守りがるたにしたらしい。途中、太一の笑顔の意味が良く分からないというか、描かれ方が気持ち悪い……。太一母の核の話、肉まんヒョロの独白も、無理矢理こじつけた感じで、今回の話はしっくり来なかった。

登場した札は、「みよしのの」「あきかぜに」「きみがため・は」「ひとはいさ」「かぜそよぐ」「きりぎりす」。

第200首

ずっと見てきた 3人で始めた物語だ たくさんの人を巻き込んで だれにも譲らずここまで来た 目をそらさず見届けよう 今日が終われば 3人が 2人と1人になる

第二戦目がまだ続いている。千早が「す」を掲げる太一を見る場面は、二ページに渡る見開きで、曼殊沙華が描かれている。第26巻表紙の太一と曼殊沙華という組み合わせを思い起こさせる演出だ。その帯広告は「あなた一人を想ってきた――。」であった。また、曼殊沙華の花言葉は幾つかあるが、「情熱」もその一つ。

千早は盛り返しつつある。新が印象的な取り方をしているせいで、太一は劣勢のように思えるが、何気無いコマでは太一が取っているようにも見える。いつぞやの千早のように、水が流れるような新のかるたに、溺れそうになっている太一だが、独白の「おれには」で核を思い、浮上するのだろう。

読まれた札は「すみのえの」「なにわえの」「わすらるる」「わたのはら・や」「あきのたの」「あらざらん」「さびしさに」「あまのはら」。

第201首

綾瀬はけっして器用じゃない でも根気よく ごりごりと道路を引く

クイーン位挑戦者は二連勝した千早に決定。札との繋がりについて、詩暢は絹糸のように繊細な線というイメージなのに対し、千早は強欲な性格を表すような太い線、しかもガテン系でショベルカーでごりごりと。

太一と新はお互いに自陣はきっちり取っているので、新は敵陣を抜けず「ちは」を送る機会が無かったらしい。思えば結局、千早の試合で「ちは」が読まれることなく終わってしまったな……。

読まれた札は「こころあてに」「わびぬれば」「たきのおとは」「ほととぎす」「もろともに」「みよしのの」「このたびは」。千早が勝利を決めたのは、富士山の「たごのうらに」。

第202首

どんなときも おれの先生は 原田先生だけ

男子側も二戦目が終了。新が一勝していたから出来たことだが、こんな譲り方はアリなのか。運命戦うんぬんの約束はしたものの関係無く決着して欲しかった。新側の応援団からすれば、ありえねー、なに余裕かましてんだよ、てなもので。

太一が憧れていると言う千早の「ふ」の取りは、第三首で小学生千早が初めて白波会に行った時、原田先生のおでこにびたんと飛ばした場面。小学生太一の表情は全く描かれていない。ただ、太一は第6巻第32首での対西田とのB級決勝戦で「ふ」を取ってドヤ顔していたり、第37巻第191首の対原田戦でも綺麗に攫っていたし、F音が太一にとっても特別であるような描写は何度かあった。

「ちは」と「ふ」と言えば、前年の挑戦者決定戦を描いた第23巻第119首にて、新が拘って最後まで自陣に残してしまった札。「せ」は新にも太一にも因縁がある札。そして、最後の「ちぎりき」は、悲しい終わりの恋の歌。

読まれたのは「つきみれば」「ちはやぶる」「ふくからに」「ちぎりきな」で、最後に一枚残ったのが「せをはやみ」。

第203首

「千早がもし夢を叶えるなら クイーンになるんなら 一番近くで その瞬間を見たい」

第二試合目後のインターバル。千早は終始寝っ放し。太一の勝利が決まり、原田先生は厳しい表情にも見えるが、広史さんや瑞沢一同は凄い凄いと褒め称えている。唯一ヒョロが突っ込んだくらい。太一は表情を変えることなく、大っぴらに喜んだりもせず、勝利は勝利として受け入れているだけのようだ。

新陣営は、誰も問い詰めたりはせず、次に向けてただ励ましている。実質二勝のようなものだし、という余裕もありそうだ。警戒しているのは、栗山先生のみ。新父が弁当を食べる新を、動画で撮っている。何故わざわざ動画?

新の表情は、一貫して無の状態。何を考えているのか分かり難い。試合直後に詩暢と千早に気付いている様子ではあるが、顔面が陰でぼかされ、目は描かれていない。西予選時の第184首で、声を掛けた詩暢を無視した時の冷たさが思い出される。なので、弁当を頬張る顔は異質。やけに子供っぽいのは、子供時代から変わらない、というのを表現しているのか。かるたや千早に対するスタンス、性格面などで。

太一が疲れている、と新は認識しているが、体力面ではなく気力の方を指しているのか。千早の話をしつつも、気負っていない太一に見える。そう言えば、肉まんくんは新の状態について、リラックスという表現を何度か使っている(第39巻第169首など)が、似たようなものか。

丁寧に札を並べる太一の指先にあるのは、紅葉と竜田川の「あらしふく」。試合が始まり、一枚目で飛んでいるのは新陣にあった「あきのたの」。名人戦で陣決めに使う札だ。新の取りのようでいて、微妙にも見える。その次の描写は、太一陣の右中段がごっそり払われているが、自陣に強い太一の取りか。

ちぎりきな

描かれた花は菖蒲(しょうぶ)と見るが、花言葉は「信頼」「情熱」「嬉しい知らせ」「あなたを信じる」「優しい心」「優しさ」「伝言」「心意気」「優雅」。帯は「青春ぜんぶ懸けてここまできた――」で、紙版コミックスには帯がかかって太一の顔が半分隠れる仕様になっているのだが、新と太一の位置が逆ならしっくり来るような。

posted on August 9, 2018  娯楽